Research

概要

私たちの研究室では、光を1個1個の粒子(光子)として制御し、発生させることで、

  1. 光の未知なる性質の解明と量子計測・センシング技術への応用
  2. 光量子情報通信技術への応用

を目的として、実験研究を推進しています。実験では、光の量子性(粒子としての性質)が顕著に表れる、極微弱光領域における光子の生成・制御、および検出技術の開発に取り組んでいます。

光の未知なる性質の解明と量子計測・センシング技術への応用

これまでに、様々な物理系を利用した量子情報処理技術の原理検証実験が報告されていますが、それらの中でも光子は量子ビットの物理媒体として極めて優れた物理系を提供するため、数多くの実験研究が報告されています。特に、偏光自由度の光子の振る舞いが量子ビットと良く対応するため、偏光自由度において、光子-光子間の量子相関を制御した量子もつれ光子(偏光量子もつれ光子)は、量子情報通信技術の分野の創成に大きく貢献しました。しかし、量子もつれ光子の持つ可能性は量子情報通信技術だけにとどまらない、光科学技術全般に変革をもたらすと考えています。その突破口が周波数自由度における量子もつれ光子(周波数量子もつれ光子)の概念を従来の波動光学に持ち込むことにあります。

光を電磁波として扱う波動光学は、光子と光子の間の周波数自由度の量子相関(周波数量子もつれ)は存在しない無相関な光子群の振る舞いを扱うことと等価とみなせます。一方で、周波数量子もつれ光子は光子-光子間に強い周波数相関を持つため、その振る舞いは従来の波動光学では説明できません。そのため、「周波数量子もつれ光子」の生成、操作、検出が自在に出来るようになると、波動光学の常識を打ち破る、光の究極的な利用と革新的な光科学技術への展開が期待できます。

例えば、物質の内部状態を量子論で扱う一方で、光を古典的な電磁波として扱う半古典近似は、多くの光と物質との相互作用を非常に良く説明してきました。一方で、量子光学的な観点から考えた場合、従来の分光計測技術で観測される時間-周波数スペクトルは、光子統計性や量子相関といった非古典光特有の性質がかき消され、平均化された光の情報しか含んでいません。半古典近似が大きな成功を収めてきたことの背景には、従来の分光計測技術では光の古典的波動としての性質しかとらえることは出来ないため、半古典近似に従う現象しか観測できなかったことも一因であると考えています。そこで、「周波数量子もつれ光子」の概念に基づいた分光計測手法を確立することにより、従来は観測することの出来なかった光と物質との新たな関わり方が見えるようになることを期待し、研究を進めています。

*やさしい解説はこちらを参照して下さい。

(「ようこそ量子」インタビュー記事)

光量子情報通信技術への応用

究極的な情報処理技術および情報通信技術として、量子コンピューターに代表される量子情報処理技術や、量子暗号・量子テレポーテーションをはじめとした量子情報通信技術への関心が、近年非常に高まっています。

私たちの研究室では、「光量子情報通信技術」に関連した研究を、「国立研究開発法人 情報通信研究機構 (NICT)」と共同で推進しています。研究内容については、これまでの共同研究成果に関する、以下の報道発表資料(電気通信大学ホームページに掲載)を参考にして下さい。

また、電気通信大学とNICTとの間で、量子ネットワークの実現を目指した「光空間通信実験」を行っています。実験の様子は、以下の動画を御覧下さい。